僕の星
 里奈は頭を横に振る。いくら何でも、それは大げさすぎだ。

「だって、進太君はモデルだよ? 仕事でいくらでもきれいな人を見ているのに、私なんて」
「好きな女の子は特別なんだよ」

 春彦は断定的に言うと、足を止めた。

「……俺はまた、嫉妬してる」

 月明かりに浮かぶ里奈の顔を、彼はじっと見つめる。

「唇や、目もと、素肌……どこもかしこも、女なんだ」

 彼は里奈の髪に大きな手を差し入れ、そのまま顔を引き寄せると唇を押し付けた。

「……ん」

 里奈の胸は、あり得ないほど高鳴り始める。

 今までキスは何度もしたけれど、彼との関係はまだそれ以上ではなかった。
 だけど、今夜の貪るようなキスと、里奈に触れる彼の手の平には、一気に親密な関係に踏み込んできそうな、激しさが感じられる。

「……俺、もう限界かも」

 ようやく唇を解放すると、春彦はため息とともに漏らした。里奈を強く抱きしめ、懸命に堪えている。

「春彦……私……」

 里奈もつぶやいたけれど、車が一台通り過ぎたので彼には聞こえなかった。

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