雨のち、君と。



「ただいま。」


「おかえり。」




くすぐったいやり取りにようやく慣れてきた。




帰ってきたら、生がいて、話ができる。
ただ幸せを感じてた。


でも…


なにか大切なことを忘れている気がして、仕方なかった。






その何かは、わからないままだった。


生がいなくなるまで。









梅雨明け間近の、7月のはじめ


生はいなくなった。







あたかも、もともとそこには何もなかったかのように。誰もいなかったかのように。

静かにいなくなった。








思いつく場所は全部探した。


一緒に行ったショッピングモールや、家の周りも何週したのかわからないほど。







生はどこにもいなかった。







「なんで…。」




生がいなくなった日も、いつも通りだった。

普通の朝。いつもの会話。


違和感は一つもなかった。








生はいないまま。

俺は一人のまま。



気づけば一か月が経とうとしてた。




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