雨のち、君と。
疲れた。
グチグチと嫌味を言ってくるおっさんたちの中で仕事をするのは本当に非効率的だと思う。
…いや、生から見たら俺もおっさんかな……?
いやいやまだいけるだろう。
顔は…まあ中の上くらいじゃないかな…?
イケメン、とは言えないけど、悪くはないはずだ。
自分で言うのもアレだけど。
背だって180センチ近い。どうだ。
生は小さかったな。
えっとこのあたりだったから…、150センチちょっとってとこか?
華奢な白い腕。
俺と会うまではどうしてたんだろうか。
生のことが気になって仕方ない。
なんでかわからない、理由なんてないけど初めて会った気がしなくて。思い浮かぶのは生のことばかり。
鍵を回してドアを開ける。部屋に明かりがついていることへの違和感。くすぐったくて少し恥ずかしい、嬉しい違和感だ。
「おかえりっ!」
キッチンからぴょんっと飛び出してきた生はとびっきりの笑顔だった。
「…っ、ただいま?」
こんな、幸せなやりとりも久しぶりすぎて、声が詰まった。人が待っている家に帰るのってこんなに幸せで温かくて優しいものだったのか。
「ご飯できてるよ。野菜全然なかったから、具のないカレーだけど。」
野菜も買わなきゃだめだよー、とぶーぶー言ってる生がなんだか可愛くって。
…いやいやだめだよ、19歳だから。
10歳離れた子に向かってなにを思っている。俺。
「蒼弥?ごはんは?」
「あ、うん、食べる。ありがとう。」
返事をした俺に満足したのか、生は楽しそうにカレーをよそってくれた。
人と向かいって食べるご飯は、こんなに美味しいんだ。気を抜いたら、目から何かこぼれ落ちてしまいそうだったが、それはどうにか寸前のところで留めることができた。