ポンコツ同盟
「匠ー。数学の教科書忘れちゃったー。貸して…」
「…何あれ。」
「うわ。ホモカップルがそろっちまった!」
新垣がわざとらしく大声で言った。
俺だけじゃなくて、優人まで変な目で見られてしまう。これは否定するべきなのか、昨日のキスはただふざけてただけだって。でもそんなのは嫌だ。優人のことが本気で好きなのに。この場を切り抜けるためとはいえ、そんな嘘はつきたくない。だけど、何も言わなかったら、このまま冷やかされて、優人まで傷ついてしまう。
「お前らやめろって!」
荒川が慌てて黒板の文字を消した。それでも面白がる男子たちの声は消えない。
優人は辛そうに顔を歪める。俺はどうすることもできない。
その時、咲ちゃんが言い放った。
「匠も優人もホモじゃないよ!たまたま好きになった相手が男だっただけ!男が好きなわけじゃない!お互いがお互いを好きなだけだよ!」
咲ちゃんは目に涙を浮かべている。
「なんで!本気で恋愛してる2人が面白おかしくからかわれなきゃなんないの!なんで2人が傷つかなきゃなんないの!」
「…咲子、ありがとう。大丈夫だよ。」
優人はそう言うと、悲しそうに笑って咲ちゃんの手を握った。