ポンコツ同盟
中学に上がると同時にピアノを辞め、サッカーを始めた。
音楽の授業でピアノを見るたびウズウズする。弾きたくてたまらない。でもこれでいい。間違っていない。俺は「普通の男子」でいたいのだ。「女々しいやつ」にはなりたくないのだ。
高校生になると、背も伸びて、真っ黒に日焼けし、ますますピアノが似合わなくなった。
「平井!部活始まる!早く行こうぜ!」
「桜庭お前ほんとにサッカー好きだなあ。」
ピアノを弾きたい気持ちを抑えるためにサッカーに打ち込んだ。そしたら、本当にクラスメートからサッカーバカだと思われている。でもこれでいい。
高校で仲良くなったクラスメートの平井は同じサッカー部。一緒に走ってグラウンドに向かう。
「あ!部活着教室に忘れた!わりぃ!平井先に行ってて!」
「あんだけ張り切ってたやつが一番大事なもの忘れんなよ。先準備してるぞ。」
「おう!」
忘れ物をした俺は、教室に引き返して走った。