ポンコツ同盟
音楽室の前に来たが、もうピアノの音はしない。そっとドアを開けて中に入る。誰もいない。
ピアノだ。俺の大好きなピアノだ。大好きだったピアノだ。
誰も見ていないことを確認し、触ってみる。鍵盤を押すと、ポーンと音が響き渡った。
思い出してしまった。
ピアノの楽しさを。そして女子みたいだとからかわれた恥ずかしさも。
嘘。ほんとはずっと忘れてなかった。ピアノは弾いてなかったけど、家にあるキーボードの鍵盤を音を出さずに叩いていた。未練がましいと思いながらも、鍵盤に手を乗せることを辞められなかった。知られるのが恥ずかしくて音を出すことは出来なかった。
俺はピアノを久しぶりに弾いた。弾き殴った。思いついたメロディーをひたすら弾いた。
楽しい楽しい楽しい!楽しさしかない!とても気持ちがいい!俺の音、誰かに聴いてほしい。でも誰にも聴かれたくない。
思うがままに弾き終えたあと、ドアの方を見ると、ひとりの男子生徒が立っていた。
まずい。見られた。
呆然としていると、男子生徒が拍手をしてきた。