ポンコツ同盟
「すごいね。」
「え?」
「上手いね、ピアノ。」
「…ありがとうございます。」
その人はボサボサ頭でポーカーフェイスの男子だった。
「今の曲、なんていう曲?」
「あ…適当に弾いただけで…」
「え、じゃあ、作詞作曲君だ?」
「そんな大層なものではないですけど…」
楽しい気持ちを弾き殴っただけ。曲というには程遠い。
「いいじゃん。楽しい曲だったよ。」
「…」
「君、僕のゴーストライターになってよ。」
「は?」
「名前は?何年生?」
「1年の桜庭ですけど…」
「僕は2年の樋口だ。」
「…はあ。」
先輩かよ。
「僕の将来の夢はニートでね、作詞作曲して、1発当てて印税生活してやろうと思って、つい最近、ここに通ってるんだけど、なかなか上達しなくて。」
ニートって変なやつだな。てか、ということはもしかして…
「かえるのうたとか、ドレミの歌弾いてました?」
「そうそう。今日は吹奏楽部が市のホールで練習してるみたいだったから長時間ピアノ使えるしチャンスと思ってね。そしたらトイレに行っている間にゴーストライター候補の君がいたわけだ。」