ポンコツ同盟
「じゃあ僕のゴーストライターになってくれる?」
「それは無理です。」
「え、」
「だって、俺が曲作っても、樋口先輩が弾けなかったらバレますよ。」
そう言うと、樋口先輩は苦い顔をした。
面白くて笑った。
「でも、樋口先輩は人を楽しませる天才だと思います。先輩のかえるのうた聴いて、俺、ピアノいいなあって思いましたもん。」
「それバカにしてるよね?」
「してないですよ。」
樋口先輩のおかげで、俺は決心がついた。先輩のピアノがなければ、俺はたぶん二度と、ピアノが好きって口に出せなかっただろう。ずっと苦しいままだっただろう。
先輩と別れて外に向かうと、平井と葛西がいた。やばい。忘れてた。
「おせーよ桜庭!」
「ごめんっ!」
「早く着替えろよ。」
「あのさ、平井、葛西…」
「何?」
「ん?」
「俺、サッカー辞めるわ。」
「「…は!?」」
「サッカーバカが何言ってんの!?大丈夫か!?頭打った!?」
散々な言われようだなあ。でももう、自分の気持ちに嘘をつくのは辞める。
今日からピアノバカになる。