ポンコツ同盟
僕は一度、保健室に避難することになった。
その日、うちのクラスだけでなく、いじめの該当者がいるクラスは全授業、自習となった。
午後からうちの親と、主犯グループ全員の親が呼び出され、それぞれ個別に話をすることになった。
親が来る前に、僕はトイレに行っておこうと思い、保健室を出た。
「あ。」
「あ…」
ちょうどクラスメートに出くわしてしまった。去年は違うクラスだったやつだから今回の件には関係はないけど、ちょっと気まずい。
スルーしてトイレに向かおうとしたら、そいつに呼び止められた。
「西村くん、俺、さっき教室にいて…今年同じクラスになった桜庭なんだけど、分かる?」
「ああ、うん、分かるよ。」
桜庭は、サッカー部の次期エースと言われていたにも関わらず、突然サッカー部を辞めてしまったと騒がれていたから有名人だ。
「大丈夫?」
「ああ…うん、ごめんな、なんか。」
「ううん。樋口先輩の傘下なの?いいなあ。」
「は?」
「俺も樋口先輩の傘下に入りたいから、連絡先交換しようよ。」
「え、」
桜庭の熱に圧倒されて、通話アプリのIDを教えてしまった。
「ありがとう。この後大変だと思うけど、頑張れよ。」
そう言って風のように去ってしまった。変なやつだなあ。