ポンコツ同盟
帰りの電車は、満員ではなかったもののまあまあ混んでいて席には座れなかった。
音楽でも聴こうとバッグの中のイヤホンを探しているとき、どこかから視線を感じ、顔を上げた。すると、優香と目が合った。優香は近くの女子高に進学した中学のときのクラスメートだ。
「あ!優香じゃんー!」
彼女に近づきたかったが、人が多くてなかなか進めない。フラペチーノを持った手を高く掲げて優香にアピールすると、優香は泣きそうな目でこちらを見てきた。
「え…?」
どうしたんだろう。彼女の様子がおかしい。ふと彼女の下半身の方に目をやると、誰かの手が優香の太ももを触っていた。
優香は「たすけて」と口を動かす。
痴漢だ。助けなくては。でも前に進めない。ここから大声を出してもいいが、優香が恥ずかしい思いをするかもしれない。何より痴漢を逃がしたくない。
私は前にいる人たちをかき分け、必死で進もうとした。
その時、
「お前何やってんだよ!」
という、女の人の迫力のある声とともに、その人の手によって、痴漢の手が高く上げられた。