ポンコツ同盟

女の人は優香と同じ女子高の制服を着ている。

「いてててっ!」

その人は痴漢の手を捻り上げた。

私は呆然としていたが、慌てて優香に駆け寄り、震えている優香の体を支える。

「里穂…」

「優香、ごめんね、すぐに助けてあげられなくて。」

「大丈夫…」

恩人の女の人は、スマホでどこかに連絡し始めた。

「お兄ちゃん?ちょっと駅までダッシュで来て欲しいんだけど。うちの最寄りの。痴漢がいた。…え?私じゃない。うちの学校の子。…荒川くん来てるの?じゃあ荒川くんも来て。…めんどくない!早く!」

電車での通話はマナー違反だが、これに関しては誰も咎めなかった。

近くにいた男の人たちも応戦して男を押さえる。男は逃げようともがくが、その女の人は痴漢の手首を離さなかった。

「バスケ部の握力舐めんな!」

とても強い人だ。かっこいい。

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