ポンコツ同盟

そう思って踵を返した瞬間、昨日のことを思い出した。

昨日、痴漢を捕まえた女の子は何も躊躇わず被害者を助けた。もちろん、何の躊躇もしないのが正しいことではない。もしかしたらその痴漢が筋肉ムキムキマッチョで誰も太刀打ちできない力の持ち主だったら、その子まで危ない目に遭っていたかもしれない。下手したら、刃物などを持っていた可能性だってある。というより、すでにあの子よりも痴漢の方が体格がよく、男女の差で痴漢の方が力も強かったのではないだろうか。それでもあの子はきっと「助けたい」という一心で、それしか考えずに動いたのだろう。

たまには俺も、気持ちのまま動いてもいいのではないだろうか。

俺は意を決して、男の子に声をかけた。

「ねえ君、大丈夫?随分前からそこに座ってるみたいだけど。」

「…え?」

こちらを見た少年は、どこかで見たことのある顔だった。どこだっけ?

「もう全身ずぶ濡れだし、風邪引くよ。家帰れる?それともここで誰か待ってるの?」

「…あ、昨日のリーマンじゃん。」

「え?」

…昨日?

「昨日、痴漢を捕まえてた人じゃん。その節は。」

「…ああ!ヒーローの兄か!」

「は?」

いけない。思わず口走ってしまった。昨日の今日でまさか同じ赤の他人に出会うとは思いもしなかった。彼の特徴だったボサボサヘアーが雨でヘタっているから気づかなかった。

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