ポンコツ同盟
彼の家までは徒歩で行けた。まあまあ近かった。
『樋口』という表札の家の前に着き、彼がピンポンを押した。
中から凄い勢いで男の人が出てきた。お父さんだろうか。
「幹生!良かった!無事で!どこに行ってたんだ!心配したんだぞ!怪我はないか!?」
「…お父さん仕事は?」
「そんなの行ってられるか!息子が一晩帰ってこなかったのに!何か事件に巻き込まれたのかと思った!一睡も出来なかった!」
「ごめんなさい。僕はぐっすり寝た。」
「え、まあいいけど無事なら。…その人は?」
「雨でずぶ濡れの僕を助けてくれて、一晩泊めてくれたサラリーマン幸松さん。」
なんという紹介。
「すみません、連絡もせず一晩息子さんを預かってしまって…」
「いえいえ!あなたみたいな優しい方が息子を見つけてくれて良かった!ありがとうございました!」
後ろから彼の母親と妹さんも出てきた。
「あ!お兄ちゃん!どこ行ってたの!?てか、この前の痴漢のサラリーマンじゃん!」
「「「え、」」」
やめてくれ、ヒーローさん。それは誤解を生む言い方だ。
樋口くんの両親は咄嗟に俺から子どもたちを遠ざけた。