しつこいよ、長谷部くん




「ところでっ! 先輩のとこは何の出し物するんですかー?」



喜びの舞を終えた長谷部くんが興味津々に聞いていた。



「喫茶店」


「えっ」


「何」


「てことはっ、先輩のメイドさん姿見れるってことですか……!」



目を輝かせた長谷部くん。



「違う、私は執事」


「な!? なんでっ」


「なんでも何も」



期待されたから、と答えようとして、なんだかそれではつまらないなと思った。


では、なんと答えようか。


………あ。


去年、確か沢山の女の子に言われた言葉が思い出された。



「王子様っぽいらしいから」


「王子様……!?」



長谷部くんは、信じられないと言いたげな面白い顔。


なんだかそれが変で私はまた笑いそうになった。


……変な奴だ。



「先輩、さっきから笑い堪えてますよね?」


「バレたか。だって長谷部くんが変だから」


「えー。てか堪えないで笑ってくださいよ。俺、先輩の笑顔見たーい」


「残念。堪えられないほどの笑顔は親しい人だけにって決まってるから」



ムスッとする長谷部くんが面白くて、また笑いを堪える。



「もー、わかりましたよっ」



ぷんっ、と頬を膨らませる長谷部くん。


ほんと、女子かよ。



「俺、先輩から笑顔貰えるように頑張りますから!」



そう言われて、小さく胸が鳴った、気がした。




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