しつこいよ、長谷部くん
好青年長谷部よ、大きく出たな。
「やれるもんならやってみな」
そう言えば胸の音はシュンと消えて、サッカーをやる時に出てくる負けん気が私の中を支配する。
「勝負ってことですね」
不敵に笑う長谷部くんは、勝つ気満々。
「じゃあ、まーたり先輩」
「ん?」
「もし俺が先輩のことを笑わせられたら、俺と付き合ってください」
真剣な表情の彼に、思わず口がポカンと開いた。
「………まじめに言ってる?」
「もちろん。大まじめです」
どうせ遊びで私に構っているだけなのだろう、なんて思っていたのに。
そこまで本気だったわけ?
笑わせられたら付き合って、とか……。
「……生意気だな、長谷部くんよ」
「あれ、今更ですかー?」
「や、知ってた。君、最初からずっと生意気」
「そんなつもりはないですけどね?」
なんだか余裕そうに笑う長谷部くん。
………上等。
「いいよ、受けて立つ」
その余裕、私が直々にぶち壊してあげようじゃないか。
「よっしゃ! 俺、絶対勝ちますから!」
「それはどうかな?」
長谷部くんと一緒にいて堪えられないほど笑ったら、長谷部くんの勝ち私の負け。
それぐらい私を笑わせられなかったら、私の勝ち彼の負け。
賭けるものは、2人のこれからの関係。
勝つか負けるか、付き合うか否か。
さあ、恋愛バトルの始まりだ。