しつこいよ、長谷部くん
・必死な好青年は可愛い・
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「まーたりせんぱぁーいパスパス!」
男子サッカー部と女子サッカー部合同練習日。
男女混合でチームを組んで練習試合をしている中、蛍光グリーンのビブスをきた長谷部くんが大声で私を呼ぶ。
だがしかし。
「佐野くん、パス」
風を切って走る私は、彼にはパスせず1年にしてスタメン入りを果たした背番号6の佐野くんにパスした。
「えええ、まーたり先輩! なーんで佐野にパスしてんすかぁー」
「馬渡先輩がいる時の覚うざ……」
近くを走っていた背番号11の森田くんが呆れたように言う。
うん、森田くんよ、激しく同意だ。
「まーたりせんぱいいい離れていかないでくださいいいい」
「うるさい!」
相手チームからかっさらったボールを無事に森田くんに届けた私は、左センターバック、自陣のゴール付近にいる長谷部くんに振り返り叫んだ。
「同じチームじゃないんだから、君の方に行かないのは当たり前だろうが!!」
叫んだ直後、一瞬ピタリとみんなの時間が止まる。
それから笑いの渦に包まれた。
腹を抱えながら走る選手の中、1人ぶすっとして口を尖らす長谷部くん。