しつこいよ、長谷部くん
いや、それ嘘じゃん?
絶対聞こえてたじゃん?
お前、尻尾あったら絶対フリフリしてるじゃん?
「先輩ぃーお願いしますううう」
しっつこいなぁ。
それもう君の代名詞である『積極的』を超えてるから。
「あーもう、わかったわかった」
そう言って、私はまた部室方面に走り出した。
「え、まーたり先輩!?」
突然の私の走りに、長谷部くんは驚いたようで私を追いかけてこなかった。
それを確認した私は部室の入り口付近まで走り、振り返った。
そこには、諦めかけた顔で歩いている長谷部くんの姿。
「先輩の嘘つき……」
口を尖らせてしょげている彼。
「まーたり先輩、意地悪反対です…」
よし、その表情、変えるなよ。
すう、と大きく息を吸う。
息を吸い込みすぎて、むせそうになった。
「先輩?」
私の様子を見て、長谷部くんは不思議そうな顔。
うん、わかる。
私も、今の自分のことが不思議だと思う。
でも、いいんだ。
そうしたい気分だから。
「長谷部覚ー!!」
大声で彼の名前を呼ぶ。
長谷部くんはピクリと体を揺らして「ハイッ!」と直立不動。