しつこいよ、長谷部くん
なにそんなにピシッとしちゃって。
面白いな、長谷部くん。
「あーりーがーとーうー!」
そう叫んで、彼の様子を見ることなく、私は女子サッカー部の部室に上がり込んだ。
ピシャン! と音を立ててドアを閉める。
はぁ、と一息つくと、
「紫乃あんた何やってんの」
「紫乃ちゃん何なのー、青春かよー」
部室内にいたチームメイトが爆笑した。
あ、まだみんな帰ってなかったんだ。
私を励まそうとしてくれてたりして、残ってくれてたのだろう。
てかそんなに笑うか?
「紫乃ったら面白ーい」
ベリーショートの私の髪を、チームメイトがぐじゃぐじゃと撫でた。
「あーもーやめろ!」
不満気にむすっとする私は、チームメイトの手を払いのけて、練習着を脱ぎ捨てて制服に着替えた。
「先に帰る! ありがとうお疲れ!」
そして練習着や水筒を詰め込んだスクバを持って、そう宣言した。
チームメイトは笑って「お疲れさまー」と私に手を振った。
全く、みんな私のことをからかいすぎだ。