しつこいよ、長谷部くん




なにそんなにピシッとしちゃって。


面白いな、長谷部くん。




「あーりーがーとーうー!」




そう叫んで、彼の様子を見ることなく、私は女子サッカー部の部室に上がり込んだ。


ピシャン! と音を立ててドアを閉める。


はぁ、と一息つくと、



「紫乃あんた何やってんの」


「紫乃ちゃん何なのー、青春かよー」



部室内にいたチームメイトが爆笑した。


あ、まだみんな帰ってなかったんだ。


私を励まそうとしてくれてたりして、残ってくれてたのだろう。


てかそんなに笑うか?



「紫乃ったら面白ーい」



ベリーショートの私の髪を、チームメイトがぐじゃぐじゃと撫でた。



「あーもーやめろ!」



不満気にむすっとする私は、チームメイトの手を払いのけて、練習着を脱ぎ捨てて制服に着替えた。



「先に帰る! ありがとうお疲れ!」



そして練習着や水筒を詰め込んだスクバを持って、そう宣言した。


チームメイトは笑って「お疲れさまー」と私に手を振った。


全く、みんな私のことをからかいすぎだ。



< 19 / 35 >

この作品をシェア

pagetop