しつこいよ、長谷部くん




いつもだったら、嫌々言う私に勝手についてくるくせに。


私にその質問をしたところで返ってくる答えはわかっているだろうに。


紫がかった空が、夜を連れてこようとしている。


こんなところで止まらず、暗くなる前に早く帰るべきだ。



「………やだよーだ」



今日もいつもと同じ返事をする私。


ちょっぴり、今日は一緒に帰ってやる、と言ってもいいかとも思えたけれど。


いざとなると、いつもの皮肉しか出てこなかった。


約1分が経過して、私は彼の反応がないことを不思議に思い、彼の方へ目線を動かした。



「………本当に、やだ?」



そこには私を見つめる真っ直ぐな瞳があって、私は一瞬動けなくなった。


サッカーをやる時にも、監督にも、そんなまじめな顔をしないくせに。


……今ここでしないでほしい。



「先輩、答えてくださいよ」



長谷部くんの瞳は揺らぐことなく、私を見てくる。


もう、やだなぁ。



「………ほら、行くよ」



校門を出ようと、彼の腕を掴んで歩かせようとした。


だけど、彼の手が私を止めた。



「先輩、はっきり答えてくださいよ」



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