しつこいよ、長谷部くん
……ああもう、面倒。
「やじゃないからこうやって腕引っ張ってんだろうが、アホか」
まくしたてるように早口でそう言い、私は手に力を込め、彼の腕を引いた。
「まーたり先輩、素直じゃないですねぇ」
「は?」
やっと自分で歩き出した長谷部くんから手を離そうとすると、その手を掴まれて無理やり手を繋がされた。
恋人でもないのに、手を繋いでいる私たち。
何この状況、おかしい。
離そうと手を揺らしてみたが、どうにもできそうにない。
顔を上げて長谷部くんを見ると、なぜか嬉しそう。
「……長谷部くん、手」
「暗いから、迷子になっちゃ困るでしょう?」
「このくらいの空なら暗くないし、迷子なんてならないって」
すかさずツッコむと、彼はカラカラ笑った。
「先輩はならなくても、俺がなるかもしれないから繋いでてくださいよ」
私はその答えになんだか脱力して、ため息をつきながら諦めた。
「しょうがないから繋いでいてあげる」
しっかりと繋ぎ直した手は大きくて、ちょっと胸が鳴った。
あれ、この音、聞いたことがあるような気がする。