しつこいよ、長谷部くん
・変な好青年は王子様・
□
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「え、あっ、やばかっこいい……!」
本日の馬渡は、最強にかっこいい執事に扮しております。
時は経ち、文化祭。
悲鳴とカメラのシャッター音の中にいる私は、既に耳が壊れそうになっている。
執事姿の私は去年よりも大人気のようで、我がクラスの喫茶店は外に長い列が出来るほどの大繁盛。
繁盛しているのは、とても嬉しいのだが。
「そろそろ紫乃の仕事時間、終わりだよね?」
そうなのだよ、さゆちゃん。
仕事時間の終了がもうすぐ迫ってきている。
ということは、私目当てのお客様を残してここを去ることになる。
………そんなこと出来るのか?
「紫乃にはデート行かせてあげたいけど、15分くらい延長で働いてほしいなー」
可愛らしいメイド服のスカートのフリルをいじりながら、文化祭実行委員のさゆが笑った。
「長谷部くんと文化祭回ること? デートじゃないよ、さゆ」
「いやぁ、デートでしょ。紫乃ったら何言ってんのー?」
「は?」
「ん?」
ダメだ、通じない。
「それより15分延長、やってくれる?」
「……ん、いいよ」
長谷部くんなら、わかってくれるだろう。
彼との約束に多少遅れてしまうが、私はクラスとお客様のためにもう少しだけ働くことにした。