しつこいよ、長谷部くん
後輩のテーブルから戻ると、見事に執事姿の似合わぬみっきーが台拭きを洗いながら微笑んでいた。
「紫乃ー、いいこと言ってたじゃーん」
「まあね」
照れくさくて、ちょっと自慢げに言う私。
幼なじみのみっきーにはそれがバレバレで恥ずかしいけど、みっきーは私のことをわかっていてくれているから、そこには触れず腕時計を見た。
「時間過ぎたね……」
「あ、ほんとだ」
私も自分の腕時計を見てみると、仕事終了時間を過ぎていることを知った。
「デート、行くの?」
「デートじゃないっつの」
「さっきさゆにもう少しだけいてくれって頼まれてたでしょ」
よくそんなところ見ているな。
「そう、あと15分だけ執事やることにした」
「彼のことは大丈夫?」
「多分、大丈夫」
根拠はないがそう答えた私はお盆を持ち直した。
「さ、みっきー仕事しよう」
「……うん」
心配そうにしてくれるみっきーを傍目に、私は注文票を確認した。
「えー次は……」
確認をしていると、突如教室がざわめいた。
なんだろうかと、みっきーと一緒に顔を出すと、そこには。
「あ、見つけた!」
ピンクのドレスを着た、背が高くスタイルの良すぎるお姫様がいた。