しつこいよ、長谷部くん





「長谷部くん、退いてくれるかな」


「イヤでぇす」



語尾にハートがつきそうな言い方に、思わずため息が出る。


長谷部よ、その容姿でまさかのオカマなのかよ。



「さっきの女の子は?」


「あれ先輩のファン」


「まじか」


「まじっす。俺ほんと恥ずかしかったんですけどー、ちょっとーせんぱぁーい?」



黙っていれば好青年なのだが、ウザいな。


本当この好青年は喋り始めたら台無しだ。



───キンコンカンコーン



タイミング良く鳴った放送で、長谷部くんが呼ばれた。


何をしでかしたのか知らないが、助かった。



「じゃあまた、長谷部くん」



またしても彼の横をするりとすり抜ける私。



「ま、またがあるんですね、先輩っ! 長谷部感涙です!!」



なんて発狂気味に叫ぶ彼は知らんふりだ。


どうせ感涙なんてしてないくせに、よく盛り盛りと話を盛るものだ。



「あー疲れるー」



暑苦しくて積極的すぎる彼に付きまとわれてから、私はかなり疲れている。



「ま、馬渡先輩!」


「はい?」


「あのぅ、写真お願いできませんか?」


「いいけど、お腹空いてるから1枚だけね」


「はいっ! ありがとうございます!」



今までの私の生活は、このように理解のある女の子が私と写真を撮りたいとお願いしてくるくらいだったのだから。



「イケメンな馬渡先輩が大好きです!」


「ありがとう」



こうなったのは去年の執事の男装をやったこときっかけなんだけど、とりあえずまあ私のファンとやらは礼儀正しくて、大した疲れは来なかったのだ。



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