しつこいよ、長谷部くん
青地に金色のキラキラが散りばめられた服は、どこからどう見ても、
「───王子様…」
おとぎ話に出てくる、格好いい素敵な王子様の姿。
「……え、なんで?」
「王子様だったならドキドキしたかも、って言ったじゃないですか」
王子様は、赤くなってしまった頬をぷくっと膨らませる。
そして、私の両手を握る。
「まーたり先輩のために王子様になったんですよ、ドキドキしました?」
少しだけ腰を屈めて、メイド服姿の私を覗き込んできた彼。
………ちょっと、やばい。
頬が緩んだ、と思った時にはもう遅かった。
「ちょ、まーたり先輩っ!?」
「長谷部くん面白すぎ…っ」
覗き込んでくる彼を避けて体を仰け反らせお腹を押さえて、勢い良く爆笑する私。
ええええ、と「え」を連発する長谷部くんにまた笑いが込み上げてくる。
だって、おかしいんだもん。
私にドキドキしてほしくて王子様になって、私が密かに興味のあることをわかってくれる。
サッカーの練習試合での失敗で落ち込んだ私を励ましてくれるし、自分から私との繋がりを作ろうとしてくれる。
何度でも私のことが好きだと、真摯に言ってくれる。
そんな彼がしつこいを通り越して、必死すぎて、面白い。
最高に素敵な面白さだと思ったんだもん。