しつこいよ、長谷部くん
むしろ実に良心的な私のファンである彼女達に癒されるといっても過言ではない。
それに比べて長谷部くんはと言えば、好青年であることに違いはないのだが、なにせしつこいくらいアタックしてくるので、疲れるのである。
別に疲れさせられるからといって、嫌いではないが。……好きでもないけれど。
それにしても、髪型だってベリーショートで少年のようだし口調も仕草も男っぽい私を、恋愛対象として気にいる人間がいるとは未だに驚きである。
長谷部くんは、私のどこが好きなのだろう。
「おかえりー、紫乃」
「さゆ、みっきー、お待たせ」
教室に戻ると仲の良いクラスメイトの2人が出迎えてくれた。
さゆは、ふわふわしていて女子力が高くて、すごく可愛い。
みっきーは私の幼馴染で、文化系な男の子だ。
「今日は随分遅かったね、紫乃」
「またあの積極的すぎるストーカー?」
うん、と頷くと2人は「あーやっぱり」と顔をしかめた。
「しつこい男はやだよねぇ」
「あ、じゃあ今日から俺、さゆにしつこくしないわー」
「ううん、みっきーはしつこくしても大好きだから大丈夫ぅー」
「え、やば。嬉しい、ニヤける」
デレデレと顔を緩めるバカップルに今度は私が顔をしかめた。
しかめたと言っても、2人がこうなのは日常茶飯事なので特に嫌だとかそういうマイナスな感情はないのだが。
とりあえず、癖で、みたいな。
「で、そんだけアプローチされてて、紫乃は何とも思わないの?」
みっきーに抱きつかれているさゆが、私にそう尋ねた。