しつこいよ、長谷部くん
「思わない」
スパンとそう言い切った私に、さゆが渋い顔をする。
みっきーは、居もしない長谷部くんに同情の表情。
だって、何とも思わないのだから、仕方がない。
ぶっちゃけて言うと、自分が恋するなんて考えられないのだ。
そんなものとは無縁で生きてきた私には、恋というものがよく分からない。
私の中で男といえばサッカーやフットサル関係のライバルや仲間で、彼らからもまた、私は男友達のようにしか思われていないのだから。
正確には「思わない」ではなく「思えない」なのだと思う。
そんな様子の私に、みっきーはため息をついた。
「女子サッカー部の女子って女の子らしい子ばっかりなのに、なんで紫乃だけこう男らしいんだろうなー」
言われてみれば、私が所属している女子サッカー部の女の子は、確かに可愛い。
「みっきーより男らしいもんね。さゆはそれが紫乃らしくて好きだけどねーん」
「ありがと、さゆ」
さゆのおかげで少し救われた私は、さゆに礼を言う。
「あ、俺も紫乃が格好良いの好きだよ!」
慌ててそう言うみっきーは少し減点だな。
私のこと否定してきたから、ちょっとムカついたんだよね。
「ヘッドロック!」
「ぬわっ、紫乃、やめっ」
さゆが大爆笑で首を絞められるみっきーをパシャパシャ写メる。
ほどほどにみっきーを痛めつけた私は、気分良くカフェテリアで購入したパンの袋を開けた。