しつこいよ、長谷部くん




「ところで紫乃」



パンにかじりつく私に、さゆが微笑んだ




「今年も文化祭の出し物、喫茶店なんだけど、執事やってくれるよね?」



昨日、私が部活中にみんなで話し合い、出し物を喫茶店にすることが決まったらしい。


その中で去年と同様に、執事になりきる男子に混じって私だけ特別に男装する案が出たらしい。


去年の功績を称えてのことらしく、そう言われればやるしかない。



「いいよ。私、執事やる」


「そう言ってくれると思ってました!」



パチーンと指を鳴らして、笑うさゆ。


さゆに和み、頬を緩めるみっきー。


はなっから私にメイド服をご所望の人がいないことはわかっていた。


ちょっとだけ興味があったことなんか、多分誰も気がつかない。


そういうキャラじゃないしな。



「まーたり先輩いらっしゃいますか?」



そんな風に思っていた時、微かに少しへこんでいた私の名前が丁度呼ばれた。



「はい馬渡先輩ですー」



その場から逃げるように、声の方に向かうとそこには。



「先輩、お越し下さってどーもでぇす」


「チャラ男かよ」


「えへ。会いたすぎて来ちゃいましたっ」



お前は私の彼女かよ。


そこには、好青年長谷部が得意の爽やかな笑みを浮かべて立っていた。



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