しつこいよ、長谷部くん




「で、何の用で呼んだわけ?」



教室を出て、壁に体重をかけて立つ私。


その前で、長谷部くんがペチンと手を合わせた。



「先輩にお願いがありまして!」


「何?」


「えっと、2人きりで話したいんですけど…」


「えー今?」


「今がいいです」



パン食べてる途中だけど、どうしようか。



「あ、なんなら一緒にお昼しながらってのはどうですか!」


「………」



ストーカーと一緒にお昼?


……なんちゃってね。



「おっけ。ちょっと待っといて」


「えっ、いいんすか!」


「何、文句ある?」


「ないない、ないっす! 意外だと思っただけです!」



……意外って。


そりゃ、長谷部くんはストーカーだけど、それ以前に後輩だし。


恋愛感情はないから、応えることは出来ないけれど、別に嫌いではない。


いつもコソコソせずに私には立ち向かってくる彼が、2人で話したい話がどんなものか気になるし、一緒にお昼くらい許容範囲だ。



「さゆ、みっきー。長谷部くんとお昼食べてくるね」



さゆとみっきーにそう言ってパンを掴むと、2人は「えー」と不満そうにした。


そこまで露骨にしなくても。



「……何かあったらすぐ連絡してよね」


「戦力になるかわかんないけど、さゆも行くからね」



< 7 / 35 >

この作品をシェア

pagetop