しつこいよ、長谷部くん
「で、何の用で呼んだわけ?」
教室を出て、壁に体重をかけて立つ私。
その前で、長谷部くんがペチンと手を合わせた。
「先輩にお願いがありまして!」
「何?」
「えっと、2人きりで話したいんですけど…」
「えー今?」
「今がいいです」
パン食べてる途中だけど、どうしようか。
「あ、なんなら一緒にお昼しながらってのはどうですか!」
「………」
ストーカーと一緒にお昼?
……なんちゃってね。
「おっけ。ちょっと待っといて」
「えっ、いいんすか!」
「何、文句ある?」
「ないない、ないっす! 意外だと思っただけです!」
……意外って。
そりゃ、長谷部くんはストーカーだけど、それ以前に後輩だし。
恋愛感情はないから、応えることは出来ないけれど、別に嫌いではない。
いつもコソコソせずに私には立ち向かってくる彼が、2人で話したい話がどんなものか気になるし、一緒にお昼くらい許容範囲だ。
「さゆ、みっきー。長谷部くんとお昼食べてくるね」
さゆとみっきーにそう言ってパンを掴むと、2人は「えー」と不満そうにした。
そこまで露骨にしなくても。
「……何かあったらすぐ連絡してよね」
「戦力になるかわかんないけど、さゆも行くからね」