しつこいよ、長谷部くん
みっきーはまだしも、さゆは戦力にはならないだろうに、そう言ってくれることで笑みがこぼれる。
「さんきゅ。いってくるね」
なんだかんだしっかり送り出してくれた2人に見送られながら、私は教室を出た。
「長谷部くん、行くよ」
「はいっ」
私は長谷部くんを連れて、体育館裏に向かって適当に座った。
涼しい風が私を歓迎してくれて、気分が良くなる。
「お隣しつれーしまーす」
私の横に座った彼は、パンにかじりつき始めた私を躊躇なくガン見する。
「……何、食べにくいんだけど」
「美味しそうに食べるなぁ、と思って。あと美人さんだなぁ、て思ってドキドキしてました!」
ふふふ、と笑う長谷部くん。
よくわからないけれどちょっとムカついた私は、彼の足をやんわり踏んだ。
「あれ、今日の先輩は優しいですね? もしかして、俺のこと好きになりかけてたりしてますぅー?」
「いや、だって君スタメンだから」
「あ、そうですよね」
えへ、えへへへ、と笑う長谷部くん。
悪いけれど、特別に優しいわけではないし、好きになりかけてすらいない。
サッカー部のスタメンになら誰しも優しく体を気遣うだろう、冷たい私だってスタメンの体は気遣わねばとわかっている。
花の森東高校サッカー部。
毎年必ず好成績を残す男子サッカー部の中でも、今年は最強の11人が揃っている。
最強とは技術面だけではなく、スタメン11人の全員がイケメンだということも含まれている。
彼らは通称〝 スタメンイレブン 〟と呼ばれている。