《短》森田の女嫌いも何のその。
こんな醜い自分を知りたくなかった。
こんな事なら、森田なんか好きにならなきゃ良かった。そしたら、綺麗なままの私でいられたかもしれないのに。
「って、おい!部活始まんぞ!」
「あ、やっべ…急ごうぜ」
──────ガラガラッ
突然開いた部室のドア。
ボロボロ涙を零して立ち尽くす私。
「……っ、お前何して…」
驚いたように目を見開いた森田と、焦りを隠せないとばかりに森田へ視線を投げる残りの2人。
「森田のバカ。大バカ。ゲス野郎。もういい、森田なんか嫌い。さようなら。」
「……おい、江菜!」
私の精一杯の強がりを全部ぶつけて、背中を向けた私はひたすら走る。
走って走って、何が悲しかったのかも、何がこんなに私を走らせてるのかも
全部全部分からなくなるくらい走って、
それでも森田を好きって気持ちだけは見失う事が出来なくて
こんな時に、初めて名前で呼ぶなんてズルいじゃん。ズルすぎるよ…。
あーもう、涙が止まらない。
追いかけてきてくれる事なんてない。彼はスタメンイレブン…背番号11。
背中に大きなプレッシャーを背負った、試合前日のサッカー男子。
私のことなんか、これっぽっちも好きじゃない…女嫌いな森田朔なんだから。