下村係長と同期の榎本くんの、シェア彼女…!?
「これで全部か?」


「はい。忘れ物はありません」


「じゃ、高島部長。監察からの呼び出し、楽しみにしていてくださいね」


係長の後ろからペコンと頭を下げると、青ざめた高島部長が口をパクパクさせているのが見えたけど、事態をこじれさせたくないわたしは何も言わずに台車を押す係長の後を追った。


「あの…!下村係長!」


「んぁ?」


「どうしてわたし、営業に…?」


「平日はオレのモン、オレから仕事教わるっつーの、ウソ?」


「嘘じゃないですけど…。でも、課をまたいで庶務の仕事するなんて…」


「このご時世、パソコン1つありゃ、何でもできるだろ」


「そうかもですけど…。あ、それに社内苦情相談て…?」


「はっ?カナ、そんな事も知らねぇで日々、アソコで肩身の狭い思いして耐えてたのか?」


「耐えて、というか…。わたしなんてその程度の仕事しかこなせてなかったし…」


「なんてとか言うな。言っただろ?カナにかかる負荷が大き過ぎてたんだよ。あのな、社内苦情相談てのは、セクハラ、パワハラ、マタハラなんかの職場における精神的な暴力、嫌がらせに対しての社の対策だ。カードあげて監察に報告すれば、被害者基準で調査してハラスメントが認められた場合、加害者側にそれなりの処分が下る」


「処分?」


「降給、降格、クビとかだな」


「そんなっ。クビだなんて!部長にもご家族がいらっしゃいますっ」


「あのな、カナ。オレらは義務を果たして権利を得られて仕事ができてる。高島には人の上に立って部下を使う権利なんて、ねぇんだよ」


「でも…」


「ホラ、乗れ。さっさと上行くぞ」


下村係長はエレベーターのボタンを押しながら、わたしを中へ。


エレベーターには係長とわたしの2人きり。


2階から3階まではすぐだけど、その時間がすごく長く感じるのは…合わせたいのに合わせられない視線、触れてみたいのに届かない手のせい…なのかもしれない。
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