白衣とメガネと懐中時計


向き合った、あたしたち。
彼のその瞳に灯る熱情は初めて見るものだった。

「普段は格好いいお前から、白衣と眼鏡を取れば、無防備で素敵な女になること、俺は知ってる」

危険な薬品に汚れないように、溶かされないように、いつも身に着けていた、白衣と眼鏡。

もう色んなシミがついて、汚れてしまった白衣。

何秒、見つめあったのかわからない。

ふらりと彼の身体が揺れて、唇が奪われた。

一瞬の重なりなのに、身体中が痺れる。

「俺は好きだ。茉咲のこと。格好良くてがむしゃらで、でも可愛い茉咲のことが、誰よりも好きだ」

「……」

返事をしたくても、キスの余韻があたしの唇を動かさない。

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