【短】佐野くん、いい加減にして。
火曜日である今日、サッカー部はお休み。
だから、部活中も部活が終わった後も、私の前に佐野くんが来ることはない。
"しつこい" なんて言ってる私だけど、サッカー部がお休みの日は寂しいと感じてしまうのは仕方のないことだった。
「渡瀬」
ふと、名前を呼ばれる。
見上げると、そこにいたのは同級生の仲野 (ナカノ) くんで。
「部室に残ってるの、俺が最後だよ。戸締り、今日は渡瀬がチェックなんでしょ?」
ぼーっとしていた私に、わざわざ部員が全員帰ったことを教えてくれたみたい。
「あ、ありがとう」
「いーえ」
仲野くんにお礼を言って、さっさと戸締りを確認する。
それが終わった私は、最後に部室に鍵をかけて、帰ろうと玄関へ向かった。