～ただ前へ～

立ち止まる私の横を生徒たちが追い抜いてゆく。


「カノン、おはよー」

同じクラスの親友、葉田　京香（はだ　きょうか）が声をかけてきた。

「おはよ、京香」

笑顔で答える。


「どうしたの？こんなとこで止まって」

「見て、海がきれい。それに今日は特に熱いから疲れちゃった」

ふぅ。

ため息をついて見せる。


「相変わらずマイペースだね。ほら行くよ」


笑う京香に促されて、私たちは歩きだす。


「もうすぐ夏休みだね」

「予定ある？」

他愛のない会話。


私たちの高校は二期制なので、７月にいわゆる期末試験がない。

その分気楽ではあるけど、９月の始めに期末があるから、８月に試験勉強をしなくてはならず、なんとも複雑な気分の夏休みなのだ。

これは、夏休みに勉強させる先生方の作戦だと私は思っている。