最後の暗闇
「いやだ、いやだ、いやだ」

「王様」


私は低く彼を呼ぶ。

感情は一切込めずに。


溢れそうな涙。

けれど溢れさせはせず。

王様は、真っ赤な顔で、うるんだ瞳で、私を見上げた。




「私をがっかりさせないで下さい」

「!」


王様は顔をくしゃくしゃにして、耐えた。

彼の心に渦巻くナニカに。



「・・・ありがとう」


小さな声で、けれど確かに、彼は言う。




私は笑ってしまう。

愛しくて。




「ありがとう、リヤーナ」

「ありがたきお言葉」



私は微笑んだ。

そのまま、スルリと窓というには粗末すぎる四角い穴から身を落とした。



暗闇の中。

一直線に落ちてゆく。


ビュウビュウという風の中、揺れる声が私を追った。




「ありがとう!ありがとう!大好きだよ!
お母さん!!!」



生温かい雫が頰に触れ、私は笑ってしまう。

嬉しくて。





小さな王様。

たった一人のさみしい君主。



私の愛息子。




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