REINCARNATION〜永遠の果てに君を想う〜
「脳死の薬なんて高校生が作れるわけ・・・」

「私は医学部までの知識は頭に入ってますから。
先生のファイルみて作っちゃったんだ。
夏が終わったら私は、陸斗と一つになる。」

「なんだよそれ」

「珍しく怖い顔して、可愛くないぞ」

「なんだよそれ!そんなの・・・」

「秋人が科学を否定しちゃ、ダメでしょ?
それにもう遅いよ。
薬飲んじゃった。
だからお願い。私に最後に海を見せて。」

秋人は生まれて初めて涙を流した。



そして椿と共に駅へ向かった。

「あと何時間だい?」

「5時間ぐらいかな」

「そうか」

野幌駅から電車にのり銭函駅まで。
2人はただ寄り添い。
ただ車窓を眺め、電車に揺られた。
銭函駅で下車。
潮の香りがする。
2人は手をつなぎ、浜辺までたわいもない話をした。
ドンドン波の音が大きくなり
砂に足跡を残しながら歩いた。
流木を背に砂の上に座り、秋人に持たれながら椿が口を開いた。

「ねぇ秋人」

「なんだい」

「私ね、秋人の声が好きなの。
綺麗な細い手も好き。
照れた顔も、妬けるほど科学に夢中な秋人も。
最後にもう一個お願い。
秋人、私の最初で最後の彼氏になって、
嘘でもいいから私の事好きって言って」

秋人は椿にバレないように
静かに泣いた。
もうとっくに秋人は椿に思いを寄せていた。

「嘘なんかじゃない。
椿が好きだよ。
大好きだよ。
僕から言わせて欲しかったな。」

「嬉しいな・・・両思い・・・嬉しい。」

「椿・・・愛してる」

「秋人・・・愛してる」

椿の薬は完璧だった。
体や内臓になんの損傷もなく、脳の機能だけを停止した。
そして・・・夏が終わった。
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