真実の花(仮)~花と光と奏でmelody2
失われたイマ

記憶

目元に優しく触れる熱を感じて、ゆっくりと上げた瞼。

瞳に映った見慣れない天井が、私を現実へと引き戻した。



「紫音?」



そう名前を呼ばれて、私は聞こえてきた方へと視線を動かすと、心配そうに私を覗き込むその顔に驚いた。



「よかった。気がついて」



視線が絡んで、安堵した顔と口調で掛けられた声。


私をまっすぐに見つめてくる瞳はとても優しくて、私はその瞳を見つめ返したまま、その人の名前をつぶやいた。



『一先輩?』

「………………」



私の出した言葉に、なぜか放心した様子の先輩の顔。



『?』

「……今………何て…?」

『一先輩こそ、どうかされたんですか?』



ガタンッと椅子から立ち上がったかと思うと、



「ちょっと待ってて」



言葉を残して、この場から急ぐように出て行った先輩。


その後ろ姿が消えた場所を見つめながら、私は寝ていた身体を起こして辺りを見回した。



(病院?………どうして?)



自分がなぜここにいるのかがわからなかった。


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