【短】矢田くんはヒーロー。



「俺だっていつか……」


拳をギュッと握りしめながら、矢田くんは俯く。


だけどそれは一瞬のことで、すぐに笑顔になった。



「じゃ、俺練習行かなきゃなんねーから」


「あ…、」


またな!とすごいスピードで駆けていく矢田くん。


私の声は、どこかに掻き消された。




ただ一言、頑張ってって言うだけなのに。


どうして私はこんなにも臆病なんだろう。




ふと見えた矢田くんの背中は、やけに遠く感じた。


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