こんな私が、恋したみたいです。
そこには、まだりっちゃんが佇んでいた。



傘をさす。




鼻をすする音。



「りっちゃん?」



泣いてる?雨のせいで、涙は見えないけど。




「寒いっしょ。家、誰もいないよ」



りっちゃんの背中に手を置いて、そっと、家に行くように促す。



「…ありがと」




消えそうな、聞き取るのもやっとな、小さな声でそう言った。



「うん」




「拭いてて」



全身から滴る水。



その頭にタオルを乗せて、俺は部屋に行った。



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