こんな私が、恋したみたいです。
「ん?」


へえ、前髪は割と長いんだ。



いつも巻いてるから分からなかった。



「喧嘩したの?」



「いや…、私が勝手に帰ったの」



「嫌なこと、言われた?」



りっくんは調子者だから、ふとした時に口を滑らすことがある。



「…うん、けど、りっくんからじゃない」



まあ、りっちゃんの前では気をつけてるみたいだけど。



「じゃあー、粟原さんか」



そう言ったら、小さく頷いた。



「りっくん、ね、」



カップを両手で包んだ。



「うん」



あっという間に目に涙を溜める。



「もっちがさっき教えてくれたやつあったじゃん。悪口やめてくれたんだよってやつ」



「うん」



溢れ出すのは、時間の問題だろう。



「あれ、始めたのりっくんだよって、言われて」



「あー、」



とことん、陥れる気だな。



「違うって、分かってるし、そう信じてるんだけど」



なんで、なにを思ってりっちゃんを傷つけるんだ。



「うん」



「でも、なんかりっくんみたら、そーかもなんて思っちゃって、…なんか、どうしようもなく嫌になっちゃって」


一筋の涙が、頬を伝った。



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