こんな私が、恋したみたいです。
翌日、やっぱり何も考えないように、無駄にもっちに絡んで、いつもより真面目に授業を聞いた。
そして、いつもより部活を頑張った。
「いやでも緊張するわ」
出来るだけ、考えないでおこうって思ったのに。
「行こ」
早くしないと、どんどん時間がなくなる。
2回もやって慣れた、面会手続き。
「…あれ?」
昨日は確かにあった、りっちゃんの名前が欄にない。
もう退院?そんな、バカな。
「あの…、神多律は?」
きっと、印刷ミスか何かだろう。
「神多さん…?あぁ、面会拒絶ですね」
「え?」
「神多さんにお会いすることはできません」
思わぬ返事に、うろたえる。
「嘘だろ」
さすがりっちゃん。頭がいい。
「どうしても、ダメですか?」
俺は、どうしても、会いたい。
「そうですねぇ…」
「…わかりました」
それほど、嫌われたってことだろう。
「それなら」
ねえりっちゃん。知ってる?
りっくんって人はね、元気も取り柄だけど、諦めが悪いんだよ。
面会受付を出て正面入り口に行く。
そこらへんの椅子に座って、カバンの中から適当にノートを出した。
場所は最高に悪いけど、これより他思いつかない。
適当にページを開く。
【橋森です。今日も来ちゃった!けど、入れませんって言われちゃったー笑
俺は会いたかったんだけどなー、具合悪いのかな?あ、でも、今日俺めっちゃ汗かいたから多分臭い!会わなくてある意味正解かも笑
でも、俺どーしても神多に言いたいことがあるの!あと、神多のママの話とか楽しかった話とかもいっぱい聞きたい!だから、会うとまでいかなくても、電話でもラインでもいいからしたいな!気が向いたらでいいから、よかったら連絡してくれる?】
思ったことをツラツラと書いて、綺麗に2つにおる。
そして、ナースステーションで、俺の言うことにびっくりしている看護師さんに、りっちゃんに渡すように手紙を押し付けた。
返されないように、そのまま、走って逃げるように、帰路につく。