こんな私が、恋したみたいです。
「具合は?」



「ぼちぼち」




俺は下を向くりっちゃんばかり見ていたけど、りっちゃんは強く握る自分の拳を見ていることに気がついた。




「うん。良かった」




そう言いながら、りっちゃんの拳を優しく握る。




「…えっ?」





「そんなぎゅーってしたら、手のひら、痛いよ」




その、あまり切られていない爪が、皮膚に食い込むでしょ。



「…そ、だね」




その言葉と同時に、俺の手に涙が零れ落ちた。




りっちゃんは、慌てたようにそっぽを向く。



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