こんな私が、恋したみたいです。
「ねぇね」




「うん?」




箸を止めて、だけどそのままご飯を見つめながら、りっちゃんが言う。




「学校にまだ私の席、ある?」




ちょっと、悲しそうに。




「あるよ。もちろん」




なくなるわけ、ないじゃんか。




「そっかぁ、よかった」




いきなり明るい声になって、また箸を動かす。




「よかった、ね」




ほんとは、何を考えているんだろう。




「うん!良かった!!」




その、ニコニコ顔の裏では、どう思っているの?





「ねぇ、その卵焼き欲しい!」



無理した笑顔のまま、俺に向く。




「うん、てか、好きなの持ってきな」



きっと、俺なんかには言えないことがあるんだろうな。




「ほんとに!?」




「いいよ」



でも、あまりに嬉しそうだから、それでもいいかななんて思ってしまう。





「やったぁ」




迷わず卵焼きを選んで、すぐに口に運んだ。





りっちゃんがこんなに喜んでいるなら、おかずぐらいなくなったっていいよね。




「ねぇ、ウインナーもいい?」




「なんだっていいってば」




可愛いりっちゃんが、面白い。




容赦なく俺の弁当をつまみ食いしてくるところも。




「肉とかいつぶりだろ〜」




可愛いなぁって思っていたら、いつまでもりっちゃんといたくなってしまった。





それはきっと、無理なのに。




「橋森くんのお母さん、絶対料理うまいよね!」




「男ばっかの三兄弟だからかな。量産しないと間に合わないんだよ」



口にご飯を入れたままのおしゃべり。




「そうなの!そう言う友達、いた気がするなぁ、思い出せないけど」



だれだっけー?と呑気に言う。




「でも、そこは分かるんだ」




「そうなの!なんか微妙に思い出す」




端々が、蘇っているのかな。




「へぇ、例えば?」




「誰か1人めっちゃ私につきまとってくる人がいたこととかー、毎日放課後走って部活に行ってたこととか」




何部かもわかんないけど。と付け足した。



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