こんな私が、恋したみたいです。
「ねぇ、りっちゃん」




眠ったかのように、じっとしているりっちゃんに話しかけた。





「ん?」




携帯をいじっていたらしく、それとともにこちらに向いてくれた。



「何で、俺呼んだの?」




こんな、1ヶ月もたって、何でいきなり呼ばれたのかが分からなかった。




何か、あるんじゃないかと思ってきたのに、




特に変わった様子はないし。





「なんかないと、ダメだった?」





怪訝そうな顔をして俺を見る。





「…いや、そうではないけど」





「暇なんだもん。1人じゃやることなくなっちゃう」





そう言いながら、しきりに携帯を触っている。




「お母さんは?」




そう聞いたら、りっちゃんの文字を打つ手が止まった。





「来ないよ」




そう、小さく言って、また手を動かし始める。




「来ない?」




「うん。橋森くんが来てくれた日以来、1回も」





初日だけ。と付け加えた。





「…え、じゃあ、1ヶ月お母さんと会ってないの?」





「そんなもんだよ」




なにもかも、諦めたようにそういう。





「…そう、なのか」




俺にはよく、分からないけど。




そういうものらしい。




「ままは、妹の方が大事だから」




ボソッと、まるで独り言のように言った。




だけど、俺は聞き逃さなかったからね。




< 464 / 549 >

この作品をシェア

pagetop