こんな私が、恋したみたいです。
「橋森くん、何があったの?」



俺の背中に手を添えながら、ふふって笑ってそう言う。





「…何でもないよ」




りっちゃんがどこにもいかないように、引き止めているだなんて、言えたものか。





「ふーん?変なの」




そう言っておきながら、りっちゃんだって俺の胸に顔を埋めるんだ。




りっちゃんの優しい匂い。嗅ぐのはいつぶりだろう。






「何か、」




ボソッと、呟く。




「懐かしい、気がする」




スリスリと顔を動かしながら。




「何でだろうな」




嘘。俺は覚えてるよ。最後に話したあの日、2ヶ月前のあの日に、駅でぎゅって抱きしめあった。




「うーん、何でだろ」




分かんないからのいいや、と考えるのを放棄して、また、俺にすり寄ってくる。





「りっちゃんこそ、どうしたの?」




尋常じゃないくらい、俺に近づく。




「…私今、情緒崩壊してるから、」




「うん」




泣きそうな、暗い声。






「だから、なんでか分かんないけどすっごい寂しい」




俺のシャツをキュッと掴む。





「そっか」




「あと、すっごいイライラする」



また、掴み直した。





「…うん」



「あと、…何だろ、」




多分もう、泣いているね。




「よく分かんないけど、そう言う感じ」




「そっか」




それなら、俺を使えばいい。





「気がすむまで、こうしてよっか」





存分に、使えばいい。




「…うん」





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