こんな私が、恋したみたいです。
橋森くんと、たくさん抱き合った。




思い出したら顔から火が出るほど恥ずかしいけど、でも、その時はとても幸せだった。




全部、忘れられた気がした。





あの夢の中と、同じ気持ちだった。




嫌なことをいくら吐き出しても全部聞いてくれて、全部受け取ってくれて。




汗の匂いが鼻につく、大きな胸に顔を埋めるのがお気に入りだった。





『今日は多分、7時過ぎに行けると思う!!』




いつもはこれ以上鳴らない携帯が震えて、すぐさまそれを見たら、橋森くんから連絡が来ていた。




『わかった』




いつから、私は彼にタメ口を使うようになったんだっけ?




わからない。全く知らない人なのに。





記憶喪失何で言われても、ママの顔はわかるし、パパの名前も妹の名前も思い出せた。




友達の名前も思い出せばたくさん出てきた。



私は何が分からないんだろうって、思っていたら、息を切らした知らない男の子が病室にきた。




りっちゃんなんて、そんな馴れ馴れしく言われる筋合いはない。




その時に、納得したんだ。




そっか、私、本当に記憶喪失なんだって。




今考えると、自分、だいぶ落ち着いてるけど。





『漫画、10冊持ってきたよ!』





きてくれたことは嬉しかった。ラインの通知が橋森くんで埋め尽くされるのも嬉しかった。




『え、重くない?』





素性はわからないけど、でも、いい人だと思った。






『余裕!チャリだし笑』




じゃあもう授業だから、と言われて、ラインは終わった。



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