こんな私が、恋したみたいです。
「でも、俺が何と言おうとりっちゃんが決めることだよ」




突き放すような冷たい言葉を掛けられる。




そう、それ。私はそれを待っていた。





「じゃあ決めた!」




橋森くんに向いて、笑う。




「決めた?」




疑うような目で、私を見た。





「うん!やっぱり、転校はなしにする!」




好きにしろと言うなら、好きにさせてもらうよ。




しかもそれが橋森くんの望みなら、こんなに良いことはない。




「…いいの?」




「どうせ転校したって友達0人だし、だったら1人いた方が良くない?」




いじめられようがハブられようが、何だか大丈夫な気がする。




たまにでいいから、橋森くんの隣を陣取らせてくれれば、それで。




「そっか」



やっぱり俯きながら、はにかんだのが見えた。





帰ろうか、と足を進める橋森くんと同時に足を出す。




「疲れた?」




やっぱりスピードはゆっくりで、私を向く。





「ちょっとね」



久しぶりにこんなに長く立っているし。




「それなら、急がないとな」




そう言ったら橋森くんは、ポケットから手を出して、私の指先をそっと握る。




「…え?」




びっくりして橋森くんを見ても、知らないふりをされてしまった。




繋がれた部分がドキドキして、居ても立っても居られない。




「早く帰らないと、怒られちゃうね」




少し足を早めたら、橋森くんもスピードを上げた。




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