こんな私が、恋したみたいです。
「まだかなぁ」
『今日粟原連れてくね!』
『部活は1時に終わる!』
立て続けに来たラインを何度も見て、何度も携帯を消してつけてを繰り返している。
もう2時になる。もうすぐ来てくれるはず。
ソワソワして仕方ない。楽しみ。でも、緊張もしている。
髪を整えて、散らかった漫画も綺麗に片付けた。
「え、どうしよ、緊張すんだけど」
「いいからはやく入れよ」
「え、無理。開けて」
唐突に聞こえて来た声に、橋森くんと粟原さんだな、と思う。
「はぁ?」
何だか、扉の前で揉めているようだ。
「開けるよ」
「わー無理待って!」
「もう知らん」
その声と同時に、ガラッと扉が開いた。
「連れて来たよ」
私ににこりと笑った橋森くんの後ろから、茶髪気味の女の子が顔を出した。
「りっちゃんだー!!!」
「…わっ!?」
橋森くんを突き飛ばして、私に抱きつく。
「あんだけぐずってたのに…」
笑いながら私たちを見ている。
「りっちゃん、ごめんね。本当に、本当に、ごめんね…えと、あの、だから、ごめんね」
「…なんのこと?」
謝られる覚えはない、粟原さんも私をいじめてた?
「マジで覚えてないんだ…」
唖然とした粟原さんと、はぁ、とため息を吐く橋森くん。
「じゃあ、俺昼飯買って来る」
鞄から財布を出した橋森くんに、粟原さんが振り返る。
「私のも!」
高々と手を上げた。
「分かった」
「奢りねー」
そう言って、橋森くんがいつも座る椅子に座って私に向いた。
「図々しいな」
思わず口に出た感情に、粟原さんが笑う。
「りっちゃんだ!」
なにを今更、と突っ込みたくなった。