こんな私が、恋したみたいです。
「で、なんの話だっけ?」



唐揚げにかぶりつきながら、そう言った。




「りっくんって誰?って話」




「あーそうそう!アイツよ!りっくん!」




「橋森くん?」




「橋森くん!!!?それまじウケる!!」




手を叩いて大笑いしている。




「そんな面白い?」



つられて私も笑ってしまった。




「面白いよ〜!橋森くん!?選手に言いふらそー!」




そう言って、水筒のお茶をがぶ飲みして、また啖呵を切って話し始める。




「それで!りっくんとは!!?」





「とはって、別に…」




「別にってことないでしょーに!!りっくんまだ告ってないの!?」





「こ、こくっ…!?」




頭が話についていけない。




「あー、余計なこと言った?もー、忘れちゃうなんて勿体ないよー、あんなに仲良しだったのに」




「…それ、気になる」






橋森くんは教えてくれないから。




「あんたらさ、試合帰りに一緒に帰ってみたりさ、下校一緒なんてもう当たり前よ!?一々ツーショット撮っちゃったりして!」




「毎日、一緒に?」




そんなに、仲よかったの?




それって、まるで、




「付き合ってるみたじゃない?」




「そーなの!なんで付き合わないの?焦れったくて死にそう!!」




「私は、」




「ん?」



唐揚げの筋を噛みちぎりながら、私を見る。




「好き、だったのかな」




「あったりまえじゃん!今は?全部忘れて誰お前状態?」





そうだったのか。前も私は、橋森くんが好きだったのか。




「今も、だよ」




恥ずかしくて、声がちいさくなってしまった。





「ほんと!?はやくくっつかないと〜!!」




身を乗り出して、そう言う。




「それはどうかな」




橋森くんがどう思ってるかなんて、知らないもん。




「あのねー、りっちゃん頭いいくせにバカだよね?だいぶ前から思ってたけど」




「随分言うじゃん?」




遠慮というものを知らないらしい。




素直で、いいと思うけど。




「好きでもない奴のとこに毎日通うか?普通。遊びとかご飯とか断って毎日毎日よく飽きないよね〜」




「…確かに」





いっつもなんでって思ってた。




「りっくん早く告んないかな〜」




「ないってば」




そんなうまく行く話があるとは思えない。




「え〜?」



「友達でいれれば」




「ふーん?」



疑う目で私をみて、いつのまにか食べ終えた弁当をしまう。




「じゃ、橋森くん、呼ぶか!」




「そう言われると、橋森くん違和感だね」


「でしょー?」



そう言って笑って、橋森くんを呼びにいなくなった。




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