こんな私が、恋したみたいです。
まもなく、2人がガラッと音を立てて来た。



「じゃ、私帰るから」



「え、帰っちゃうの?」



粟原さんをみてそういうと、ペロッと舌を出した。




「2人の間に入るほど図々しくありませーん」




「飯奢らせて部屋追い出してよく言うわ」



橋森くんの切り返しに、思わず笑ってしまう。




「じゃ、りっちゃん!ライン返してくれたら嬉しい!!」




そんなことは気にも留めないようで、橋森くんではなく、私に向く。




「わかった!」



「じゃーねー」




ひらひらと手を振って、橋森くんとお揃いのバッグを肩にかけて帰っていった。




「仲良くできた?」




さっきまで粟原さんが座っていた椅子に腰掛ける。



「できた!何か、台風みたいな子だね」





「ははっ。確かにそうかもな」





1人で喋って、そそくさと帰ってしまうんだから、ぴったりだ。




「橋森くんとも、仲良しじゃん」




「そう?」




思ったことを口に出してから、しまった、と思う。




「うん。私の知らない世界がある感じ」




私にはわからないコントをして、笑っていた。





やだ、私、何考えているんだろう。




「そー?」




当の橋森くんが気にしてないんだから、そんなことないんだろう。





「そ、かもね」




歯切れ悪く答える私に、橋森くんは不思議そうな顔をする。




「どーしたの?さっきまであんなに楽しそうだったのに」




そんなこと聞かれても、私だってわからない。





「さぁ?なんか、」




そこまで言って、口をつむる。




「なんか、何?」




「なんか、粟原さん、いいなーって」





何が羨ましいのかもわからないけど、羨ましい。




「粟原さん、なんかずるい」




よく分からないけど。友達の悪口なんて言いたくないけど。





「へぇ、りっちゃん、可愛い」




「…えっ?」




ちょっと俯いて話していたのに、橋森くんの言葉ではなくても人のことを読み取れるのだろうか。




「それね、ヤキモチってゆーんだよ 」
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